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「お前んちのインターフォン壊れてんの?何回も鳴らしたんだけど」
……え。
「ごめんなさい、気が付かなくて」
「お前、寝てただろ。ビール飲みながら」
鳴海さんの視線の先には、テーブルの上に乱雑に置かれたビールの空き缶。
「前髪、寝癖ついてるし」
少しでも言い訳しようとした自分が恥ずかしくなる。
だって今日は鳴海さんに会えないと思ったんだもん……。
まさか、来てくれるなんて思わなかった。
時計を見ると、さっき鳴海さんから今日は会えないって言われた時間から2時間しか経っていなかった。
「ったく……電話で寂しそうな声してたから、途中で切り上げてきたのに」
「え……」
気が付かなかった。
寂しい感情が声に出てたなんて。
「俺が気付かないとでも思った?」
私を真っ直ぐに見つめ、寝癖のついていた前髪に彼の長い指が触れる。
いつも、いつも。
どうして鳴海さんには見抜かれてしまうんだろう。
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