737人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「……私の方こそ、ごめんなさい。つい熱くなってしまって……」
「いや、いいんだ。ただ、俺は伊咲を怒らせるつもりであんな事言ったんじゃない。心配だったんだよ、お前があの男に騙されてるんじゃないかって」
そうだ、先輩は昔からそうだった。
私が陽くんと付き合う前の彼に失恋したときも、先輩はその彼にいきなり電話して、急に説教してくれた。
そういえばあのときも、余計な事はしないで下さいって怒ったっけ。
いつだって先輩は、私の事を心配してくれていたんだ。
「先輩って、本当に何も変わってないですね。2年も会ってなかったのに、心配症なのは相変わらずなんですもん」
昔の先輩を思い出したら可笑しくなって、少し笑った。
「なんだよ人が本気で心配してるのに笑って……」
「すみません。でも、もう心配しなくても大丈夫ですよ。鳴海さんは、先輩が思ってるような人じゃないですから」
「……伊咲がそこまで言うなら、心配ないのかもしれないな」
先輩がわかってくれて良かった。
これで、私と先輩の間にあった気まずさもなくなったような気がした。
最初のコメントを投稿しよう!