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「……私、この会社で頑張ろうと思います」
これが私の出した答え。
自分の仕事に対する答え。
ギリギリまで迷った。
きっと昔の私なら、迷わず先輩の誘いを受けていた。
迷うなんて選択肢自体、なかったはず。
だけど、今は昔とは違う。
今の私には、鳴海さんがいる。
鳴海さんと同じ会社でこの先も仕事がしたい。
システムに携わる仕事がしたいなら、いつか異動出来るように今やれる事をすればいい。
もしも。
考えたくなんてないけれど、もしも彼が私の傍からいなくなる日がいつか来たとしても。
私はきっと、この決断を後悔しない。
「本当は迷ったんです。先輩の誘いはやっぱり私には魅力的で。でも、思ったんです。今やりたい仕事が出来ないとしても、それは多分無駄な時間なんかじゃなくて。精一杯頑張ればいつかきっと……」
「やっぱり俺の予想通りだな」
「え……」
「お前は絶対そう言うと思った」
そう言って鳴海さんは、力強く私を抱きしめた。
久し振りの、彼の大きくて温かなぬくもり。
ここ最近ずっと張りつめていた力が、一気に抜けていくのを感じた。
「あの、鳴海さん……」
そのとき、鳴海さんはゆっくりと口を開いた。
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