出逢えた奇跡

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お父さんのお墓の前で、鳴海さんと手を合わせる。 お父さん、天国でも元気でやっていますか。 寂しくなったりしてませんか? 「今日はね、嬉しい報告があるの。……この度、私、伊咲絵麻は、鳴海タケルさんと結婚する事になりました」 隣の鳴海さんをチラッと見ると、目を閉じて手を合わせたまま動かない。 鳴海さんも、お父さんに何かを語りかけているのかな。 「お父さんに何話してたんですか?」 「……内緒」 すっごく気になるんですけど。 「何ふてくされてんの」 「別にふてくされてなんかないです」 「なぁ、入籍する日なんだけど。……9月20日にしようか」 帰ろうとしていた私は、鳴海さんのその言葉を聞いて立ち止まらずにはいられなかった。 「……9月20日って……」 その日は、お父さんの命日。 5年が経った今でも忘れる事のできない、あの最悪な1日。 大切な人が、一瞬でいなくなった日。 365日で、私が唯一、嫌いな日。
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