731人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
お父さんのお墓の前で、鳴海さんと手を合わせる。
お父さん、天国でも元気でやっていますか。
寂しくなったりしてませんか?
「今日はね、嬉しい報告があるの。……この度、私、伊咲絵麻は、鳴海タケルさんと結婚する事になりました」
隣の鳴海さんをチラッと見ると、目を閉じて手を合わせたまま動かない。
鳴海さんも、お父さんに何かを語りかけているのかな。
「お父さんに何話してたんですか?」
「……内緒」
すっごく気になるんですけど。
「何ふてくされてんの」
「別にふてくされてなんかないです」
「なぁ、入籍する日なんだけど。……9月20日にしようか」
帰ろうとしていた私は、鳴海さんのその言葉を聞いて立ち止まらずにはいられなかった。
「……9月20日って……」
その日は、お父さんの命日。
5年が経った今でも忘れる事のできない、あの最悪な1日。
大切な人が、一瞬でいなくなった日。
365日で、私が唯一、嫌いな日。
最初のコメントを投稿しよう!