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未だに、9月20日が近付く度に眠れなくなる。
あの雨の日。
夜中に突然、家の電話が鳴り響いた。
電話に出たのは、たまたま眠れなくて起きていた私だった。
父の即死を告げられた瞬間、頭が真っ白になって、呼吸が苦しくなったのを覚えている。
だけど何とか冷静に、眠っていた母と妹を起こした。
気がついたら3人で、病院にいた。
冷静を保とうとしていたはずなのに。
動揺し過ぎて、自分が取った行動をあまり覚えていない。
人が生きていくのは大変なことなのに、人が死ぬのはあっけないんだと思い知らされた。
5年前のあの日から、9月の雨の日は気分が悪くなる。
きっとそれは、私だけじゃない。
母も、絵里も、きっとそう。
私達家族は、あの悲しみを乗り越えたように見えて、乗り越えられていない。
「お父さんの命日にどうして入籍なんて……」
「お前、今でもその日が近付くと苦しいんだろ」
「……っ」
「昨年一緒に命日に墓参り行ったからわかるよ。あの何日か前から、お前の様子少しおかしかったし」
やっぱり鳴海さんは、気付いてたんだ……。
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