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「お前の家族全員が、明るくしようと無理してたけど。正直、見てて俺も辛くなった」
昨年は、鳴海さんが一緒に来てくれたから何とか笑えた。
だけど本当は、怖くてたまらなくなる。
あの日が近付く度に。
また大切な人を失ったらどうしよう。
そんな思いが、私の中からずっと消えない。
「俺は身近な大切な人を亡くした経験がまだないから、こんな事言えるのかもしれないけど。やっぱり、いつまでも悲しんでるお前は見たくない」
「……私も本当は、辛いです……」
いつまでこんな思いを抱えて生きていけばいいんだろう。
だけどそう思いながら、もう5年の月日が過ぎてしまった。
「だったら、嬉しい日に変えていけばいいんじゃねぇの?」
「え……?」
「すげぇ単純な考えだけど。悲しいなら、嬉しいとか楽しいに変えればいいじゃん」
鳴海さんの言いたかった事を、やっと私は理解した。
「結婚記念日……」
「そう。お前の父さんの命日なのは当然変えられないけど。俺とお前が結婚した日だと思えば、今までとは少し違うだろ」
大好きな鳴海さんと結婚できた日を、私が嫌いに思うはずがない。
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