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苦しみや悲しみから逃げていたって、何も変わらない。
鳴海さんは、いつもいつも、本当に大切な事を教えてくれる。
「……鳴海さん、優し過ぎます……」
こんなにも私の事を真剣に考えてくれる人なんて、世界中探してもどこにもいない。
「知らなかった?俺はお前にだけは優しいんだよ」
「……結婚しても、そのままでいて下さいね」
「了解」
そう言って鳴海さんは、私に手を差し出す。
私は躊躇うことなく、その手を握り締める。
駐車場まで手を繋いで歩く帰り道。
変わらないでほしい。
ずっとずっと、私だけを見ていてほしい。
『俺はお前を置いていなくなったりしない』
1年前にここで、鳴海さんが約束してくれた言葉を思い出す。
いつでも心の中から引き出せる、私の宝物の言葉。
「鳴海さん」
「何?」
「私、絶対に鳴海さんを幸せにしますから」
私のその言葉を聞いて、鳴海さんは盛大に吹き出した。
「酷い……何で笑うんですか……」
「俺、お前のそういうとこ相当ツボかも」
全然笑うとこじゃないのに。
「今でも十分幸せだけど。まぁ、これ以上幸せにしてくれんなら、してもらおうかな」
「了解です」
そして、この約3ヶ月後の9月20日。
私は、鳴海絵麻になった。
5年の月日が経って、初めて私は、9月20日が近づいても苦しくならなかった。
唯一の嫌いな日は、この年から1番大切な日に変わった。
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