出逢えた奇跡

13/26

731人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
苦しみや悲しみから逃げていたって、何も変わらない。 鳴海さんは、いつもいつも、本当に大切な事を教えてくれる。 「……鳴海さん、優し過ぎます……」 こんなにも私の事を真剣に考えてくれる人なんて、世界中探してもどこにもいない。 「知らなかった?俺はお前にだけは優しいんだよ」 「……結婚しても、そのままでいて下さいね」 「了解」 そう言って鳴海さんは、私に手を差し出す。 私は躊躇うことなく、その手を握り締める。 駐車場まで手を繋いで歩く帰り道。 変わらないでほしい。 ずっとずっと、私だけを見ていてほしい。 『俺はお前を置いていなくなったりしない』 1年前にここで、鳴海さんが約束してくれた言葉を思い出す。 いつでも心の中から引き出せる、私の宝物の言葉。 「鳴海さん」 「何?」 「私、絶対に鳴海さんを幸せにしますから」 私のその言葉を聞いて、鳴海さんは盛大に吹き出した。 「酷い……何で笑うんですか……」 「俺、お前のそういうとこ相当ツボかも」 全然笑うとこじゃないのに。 「今でも十分幸せだけど。まぁ、これ以上幸せにしてくれんなら、してもらおうかな」 「了解です」 そして、この約3ヶ月後の9月20日。 私は、鳴海絵麻になった。 5年の月日が経って、初めて私は、9月20日が近づいても苦しくならなかった。 唯一の嫌いな日は、この年から1番大切な日に変わった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

731人が本棚に入れています
本棚に追加