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「でも、ああ見えて仕事は誰よりも出来るらしいんです。昔先輩が言ってたんですけど、めちゃくちゃ仕事が早くて先輩はずっと尊敬してたらしくて」
「へぇ。……『先輩』ね。久し振りに聞いたな、その呼び方」
鳴海さんの表情が一気に不機嫌になって、私は慌てて口を閉じた。
先輩の話は、禁句だったんだ……。
「……増渕はあれからどうしてんの?仕事、うまくいってるのか」
「あ……最近やっと忙しくなってきたみたいです」
「ふーん。……お前、連絡取ってんの?」
「私はあれから一度も連絡取ってなくて……この間、藤崎部長から聞いたんです」
「これ、おかわりちょうだい」
鳴海さんの不機嫌だった表情が元に戻り、お味噌汁のお椀を差し出す。
……鳴海さんって、意外とわかりやすいかも。
「私も頑張ります。やっと巡ってきたチャンスなんで。今までやった事ない案件にも、チャレンジしようと思ってるんです」
「楽しそうだな」
「受付の仕事ももちろんやりがいはあったんですけど、やっぱりまたあの場所に戻れると思うとワクワクしちゃって」
どうやったって、嬉しく思わないはずがない。
早く4月にならないかな。
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