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「まぁ残業してほしくないのは、心配だからっていう以外にも理由はあるんだけど」
「え?」
「仕事が終わって家に帰ったときに、お前がいないと俺の疲れが取れねぇじゃん」
結婚前から鳴海さんと一緒にこの家で住み始めて、私が先に帰宅して、食事を作って鳴海さんが帰ってくるのを待っている。
そんな日々が当たり前だった。
私と鳴海さんの関係は、結婚してからもほとんど前と変わりはない。
私は出会ったあの日から今日まで、ずっと彼と接するときは敬語のままだし。
いまだに『タケルさん』じゃなくていつもの『鳴海さん』呼びのままだし。
だけど私は、何も変わらない2人の関係が凄く好きで、心地いい。
そしてそれはきっと、鳴海さんも同じなのかもしれない。
「……じゃあ、なるべく毎日定時で帰れるように頑張ります」
きっと私達の関係も、いつまでもずっと変わらないわけにはいかないのかもしれない。
もし私達に、いつか。
いつか子供ができたとしたら。
そのときはきっと何かが変わるのかな。
私が鳴海さんをパパとか呼ぶようになって?
鳴海さんが私をママとか呼んで……。
いや、でも鳴海さんは絶対ママなんて呼ばなそうだし……。
「また何妄想してんの?」
気がついたら鳴海さんは、いつもの呆れ顔で私を見ていた。
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