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「伊咲!総務からヘルプ。今やってる案件中断して総務行ってきて」
「え、でもあともう少しで……」
「いいから中断。行け」
「……はい」
システム部へ戻ってきてもうすぐ1年が経つ。
可愛い後輩も出来て、仕事も難しい案件をだいぶ任されるようになってきた。
やっぱり好きな仕事をしていると楽しくて、あっという間に時間が経ってしまう。
唯一の気がかりといえば、この部長の昔から変わらない暴君ぶりだけ。
「……ていうか部長、いつまで伊咲って呼ぶんですか?私もうとっくに鳴海なのに」
「あーもーうるせーな!お前なんか伊咲のままで十分だっつの」
「……そろそろ鳴海って呼んでほしいです」
「アホか。一生呼んでやんねーよ。ほら早く総務行けよ」
……パワハラ部長め。
でもこの人の口の悪さにすっかり慣れてしまっている私は、特に落ち込む事もなく総務の階へ急ぐ。
エレベーターへ急ぐとちょうどタイミング良く、システム部の階で誰かが降りるところが見えた。
「あ、すみません乗ります!」
勢いよくダッシュしてエレベーターに乗り込むと、ふっと微かに笑う声が聞こえた。
振り向くとそこには、村瀬さんが立っていた。
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