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「凄い勢いですね。大丈夫ですか?」
「す、すみません……」
ダッシュで駆け込み息が上がっている私を見てクスクスと笑う村瀬さん。
彼は私の旦那さんの部下でもあり、私の大親友の旦那さんでもある。
彼の眼鏡の奥の瞳が冷たくて怖そうとか言う人がいるけれど、雪ちゃんから村瀬さんがどれだけ優しい人かを聞いている私は、そんな風に思う事は一度もなかった。
「何階押しますか?」
「あ、そ、総務の階でお願いします……」
昔ならこんな短い距離をダッシュしても、息は上がらなかったのに。
なんて、確実に年齢を重ねているんだから昔と比べたって何の意味もないのについつい比べてしまう。
「急ぎの用事ですか?」
「そうなんです、総務からヘルプで呼ばれて。総務で使ってるシステム、この間も誤作動起こしてたんで多分その関係だと思うんですけど」
「そうですか。本当に大丈夫ですか?顔色、少し悪いですよ」
「あ……大丈夫です大丈夫です!ちょっと寝不足とか貧血とか、いろいろ重なっているだけなので!」
本当に心配そうな表情で私を見つめる村瀬さん。
そんな表情で見つめられると、自分が今どれだけ顔色が悪いのか気になってくる。
最近、仕事が異常に忙しい。
だけどタケルさんが心配するから、夜遅くまでの残業はなるべくしないで、仕事をいくつか家に持ち帰ったりしていた。
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