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「ついつい寝るのを忘れて仕事に取り組んでしまって。やっぱり寝不足は体に良くないですよね」
「仕事熱心なのは良い事だと思いますけど、熱心過ぎると課長が嫉妬しますよ」
エレベーターはあっという間に総務の階に着いて扉が開き、村瀬さんが『開』のボタンを押してくれていた。
「すみません!ありがとうございます」
「あまり、無理しないように」
村瀬さんは優しく微笑み、エレベーターの扉は閉まった。
「……無理しないように、かぁ……」
もちろんわかってはいるつもりだけど。
父のようなSEになる事を目標としている私は、少しでもかつての父に追いつきたくて無茶をしてしまう。
タケルさんが傍にいてくれなかったら、きっと今よりもっと体調崩してるだろうな。
体調管理も仕事の一つなのに、偶然エレベーターで乗り合わせた村瀬さんにまで体調が悪い事を言い当てられるなんて、本当にダメダメだな私……。
「あ、伊咲ちゃん来た!こっちこっち!」
ぼんやりとエレベーターの前で立ち尽くしていた私は、総務部から私を大声で呼ぶ仙堂さんの声で我に返った。
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