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「ごめんねわざわざ来てもらっちゃって。実はさぁ、今回俺のパソコンが動かなくなっちゃって」
「動かなくなったって、フリーズしたって事ですか?」
「そ。マウス動かしてもカーソル移動しないし、何押しても画面変わらなくて」
総務部のフロアはシステム部と違って、人が多くてフロアの面積も広い。
その中を颯爽と突き進んで自分のデスクへ向かう仙堂さんを、私も早足で後ろから追いかけた。
「これなんだけど」
「ちょっと失礼しますね」
仙堂さんのデスクに座りパソコンと向き合うと、確かにExcelで作成された見積表らしき画面が表示されていた。
「多分データが重すぎて、一時的にフリーズしてしまっただけだと思います。すぐ直しちゃいますね」
カタカタとキーボードを打ち込み作業している間、仙堂さんは私の真後ろに立ったままいつものマシンガントークを繰り広げた。
「もうさぁ、結婚当初とだいぶ変わっちゃったからね。最初の頃は必ず朝俺が家出るときは、いってらっしゃいって見送ってくれてたのにさ。今じゃ、玄関まで来てくれる事ないからね」
「……」
「しかも夕飯なんか適当だし。この間なんかカレー3日連続、その後シチュー3日連続だよ」
仙堂さんは前からよく、奥さんの愚痴を私や雪ちゃんにこぼす。
でも結局は奥さんの事が好きで仕方ない事を、私も雪ちゃんもとっくに知っている。
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