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ここが社内だってちゃんとわかっているはずなのに、タケルさんに見つめられたらあっという間に違う世界に思考が飛んでしまう。
どれだけベタ惚れしてるんだって、周りに呆れられちゃうくらい。
私はいつだって、タケルさんの事しか見えていないんだ。
「課長、伊咲さん。少し話が聞こえてしまったんですけど……本当におめでとうございます」
村瀬さんが穏やかに微笑みながら、「おめでとう」と嬉しい言葉をかけてくれた。
「あ……ありがとうございます!あ、あの、この事雪ちゃんだけは知ってるんですけど、他の人達にはまだ……」
「えぇ。もちろん誰にも言わないですよ。僕は」
僕はって、敢えて語尾を強調した村瀬さん。
その事に少し引っかかりを感じた。
そして感じた瞬間、すぐにわかった。
村瀬さんの視線の先には、柳沢さんがいたから。
私達からは少し離れた位置に立っていたとはいえ、絶対に彼女にも聞こえていたはず。
それに柳沢さんは、真剣な顔つきで真っ直ぐ私とタケルさんの様子を見ていた。
「……あ、あの……」
彼女の顔を窺いながら声をかけると、柳沢さんは肩をすくめてふっと笑みを零した。
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