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「仙堂が前に言ってましたよ。藤崎部長は、実はああ見えて凄く仕事が出来る人だって」
そっか、そうだよ。
人が足りないなんて、部長はいつも言ってたけど。
そう言ってる部長が真面目に仕事をしているところなんて、ほとんど見た事ない。
もしも部長が本気を出せば……。
「ったく仙堂のヤロー……ああ見えては余計だろうが」
「部長!私の仕事、手伝って下さい!お願いします!」
部長が手伝ってくれるなら、残業はしなくても納期に間に合う。
仕事だって、無理せずギリギリまで続けられる。
どうにか引き受けてほしくて思いきり頭を下げると、頭上からタケルさんの声が聞こえた。
「まぁ、可愛い部下にこんな風に頼まれて断れるはずないですよね」
その最後のタケルさんの一言が決め手になり、部長はブツブツ文句を言いながらも私の仕事を半分引き受けてくれる事を承諾してくれた。
「じゃあ俺戻るから。ちゃんと定時で帰れよ」
「はいっ」
満面の笑みでタケルさんを見送る私とは対照的に、部長はそれはもうしんどそうな表情で。
「だから嫌なんだよなーお前の旦那……」
と、弱気な声で呟いていた。
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