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「確かにそんな噂が社内中に知れ渡ってたら、恥ずかしいですよねタケルさんも。でもそれ、本当の事なので……」
「違う」
「え?」
違うの?
じゃあ噂って……。
「むしろ、噂になってんのはその逆」
「逆?え、逆って……」
何をどう逆にすればいいんだろう。
なんて本気で考え込んでいたら、タケルさんが呆れた表情を見せながら言った。
「だから。……俺が奥さんを溺愛してるって噂」
俺が奥さんを溺愛……俺が奥さんを……。
「え!?そ、そんな噂が流れてるんですか!?」
病院の待合室だという事もすっかり忘れていた私は、場所に似つかわしくない大きな声を上げてしまった。
タケルさんに思いきり、しっ!と一瞬で窘められた。
周りの人達の視線も何だか怖い。
「ご、ごめんなさい……だってそんな噂……」
「お前と話してるときの俺の顔が普段と違うって営業部のヤツらによく言われんだよ。で、いつの間にか社内中に広まったらしい」
私、ずっと同じ社内にいるはずなのに、そんな嬉しい噂を耳にした事なんて一度もなかった。
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