621人が本棚に入れています
本棚に追加
この子が、私とタケルさんの赤ちゃんなんだ……。
この子が……。
「……小っさ」
隣からその写真を覗き込むタケルさんが小声で呟いた。
でもその声にはちゃんと、嬉しさが滲んでいた。
「……はい。……ちっちゃいですね」
このまだ丸い袋しか見えてない赤ちゃんが、徐々に大きくなっていくんだ。
他の誰でもない、私の身体の中で。
この写真を見て、やっとこれは夢なんかじゃなく、現実なんだって思えた気がした。
「次は2週間後に来てくださいね。順調に育てば、心拍が確認出来るはずですから」
「……はい!」
それからは、ほとんどタケルさんが先生にいろいろ質問をして先生がそれに答えるといった感じで。
仕事は無理をしない範囲で続けて大丈夫だけれど、妊娠初期は何が起きてもおかしくないから、残業はしないようにとの事だった。
「お前、絶対明日から残業するなよ」
病院を後にして帰り道の車の中でも家に帰宅してからも、その事についてはしっかりタケルさんに念を押された。
「明日一応部長に報告しておけよ」
「えっもう報告した方がいいんですか?」
「お前んとこの部長なら、事情言っておかないと強引に残業させるだろ」
……確かに。
最初のコメントを投稿しよう!