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「そういえばお前、今日残業出来るよな?」
「え?」
「一つ頼みたい案件あるんだよ。15時に海外事業部の……」
「今日は残業出来ませんっ」
いつもさらりと残業を押し付けて自分は先に帰ろうとする部長だけど。
今日は何としても反抗するんだから。
「……何だよ今日用事でもあんのか」
「あります。めちゃくちゃ大事な用事があります。なので残業は絶対無理です」
キッと部長を強気に睨みつけてそう言うと、思いのほか部長もあっさりと私に残業を押し付けるのを諦めてくれた。
「お前がそんな強気に言うなんて、どうせ旦那絡みなんだろ」
「……そうですけど」
「だったらいいわ。お前のあの仏頂面の旦那、敵に回したらいろいろ面倒くせぇだろうし」
部長はタケルさんの事がどうやら苦手らしい。
何が苦手なのかって、あのクールな表情。
「お前、旦那に言っておけ。俺の事いちいち睨みつけんのやめろって」
……別に鳴海さんの鋭い視線はいつもの事だから睨んでるわけじゃないと思うけど。
でも部長がタケルさんの事を苦手でいてくれた方が私にとっては好都合だから、そこは黙っておいた。
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