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と、そのとき。
会議室の扉をコンコンとノックする音が響き、ゆっくりと開いた扉から沙耶ちゃんがチラリと顔を覗かせた。
「あの、鳴海先輩……ご主人が用事でいらっしゃってますけど……」
「え?」
すると沙耶ちゃんの後ろから、まさかのタケルさんの姿が目に飛び込んできた。
「タ、タケルさん?どうしてここに……」
「うわ、出た出た出た。絶対来ると思ったよ……」
部長は、はぁ……と深く長い溜め息をつき、思いきり渋い表情のままタケルさんを出迎えた。
「鳴海、お前なぁ……」
部長がタケルさんに文句を言おうとしたけれど、タケルさんは部長ではなく私に向かって全く今のこの話題と関係ない事を口にした。
「お前、俺の財布知らない?」
「え?財布ですか?……あ!」
私は慌てて自分のデスクへ向かい、バッグの中を確認した。
タケルさんの黒い長財布、発見。
そういえば今日一緒に車で通勤したとき、途中コンビニでタケルさんがお水を買ってくれた。
で、財布を手渡されて、鞄に閉まっておいてって言われて。
私そのとき、間違えて自分のバッグに入れちゃったんだ。
「お財布、ありました!」
タケルさんの財布を片手に握りしめて会議室へ戻ると、タケルさんと先輩が何やら話しているようだった。
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