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だけど私が戻ってきたところで、2人は会話を止めた。
「財布やっぱりお前が持ってたか」
「すみません!うっかり間違えて自分のバッグの中に……」
「うっかりし過ぎだろ」
なんて、いつものようにタケルさんから鋭いツッコミを受けていると、その様子を見ていた先輩が微笑んでいた。
「……どうして先輩、そんなに笑ってるんですか?」
「いや、相変わらず仲良いんだなと思って。あぁ、そうそう鳴海さん。ついさっき、伊咲から聞きましたよ妊娠の事。おめでとうございます」
先輩がタケルさんにそう言うと、タケルさんは一瞬ジロリと私の方を睨んだ気がした。
……ごめんなさい、つい口が滑りました。
「実は僕も近々結婚するんですけど、彼女が妊娠していて。出産時期も近いかもしれないですね」
「へぇ、そうなんだ。おめでとう。じゃあ増渕が知ってるって事は、もう部長にも言ったんだな」
「あ、はい。一応報告は済ませたんですけど……」
チラッと部長に視線を移すと、部長は思いきりタケルさんからの視線を避けるように窓から外の景色を見ているフリをしていた。
「藤崎部長」
と、タケルさんが声をかけているのに、部長は聞こえていないフリまでする始末。
タケルさんの呼びかけを無視するなんて……私だったら絶対にあり得ない。
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