621人が本棚に入れています
本棚に追加
だけどタケルさんは聞こえていないフリをされている事に気付いていながらも、そのまま言葉を続けた。
「妻が妊娠したので、体調の事も踏まえて配慮の方よろしくお願いします」
「……おぅ。わかってるよ」
窓の外を見ていた部長も、さすがに鬼ではなかったみたいで。
やっと、タケルさんの方を向いてくれた。
「けどな鳴海。お前だって、システム部の状況ぐらい……」
「もし妻が無理をして体調崩して何かあった場合、藤崎部長が全ての責任を取れるというなら話は別ですけどね」
「……」
完全にタケルさん優勢。
さすが、頼りになる旦那様。
私はとにかく、タケルさんが部長をギャフンと言い負かす事を願いながらその様子を見守っていた。
ていうか、絶対他部署の人達は、妊娠した際の配慮なんて普通にしてもらえるんだろうな……。
「あのさ、俺だって可愛い部下に無理させたいわけじゃないんだよ。ただ実際人員が足りなくて……」
「いるじゃないですか1人。誰よりも仕事が早い事で有名な人が」
そう言ってタケルさんはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
この顔……いつもタケルさんが私に意地悪するときに、見せる顔だ。
最初のコメントを投稿しよう!