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インターフォンが鳴った数分後、タケルさんが自分で鍵を開けて帰宅して。
そして帰宅したタケルさんは、ソファーで悶えている私を見て声を上げた。
「絵麻!どうした?」
珍しく血相を変えたタケルさんの表情が視界に飛び込んできた。
「……タケルさん、お帰りなさい……」
「お帰りじゃなくて。どうした?具合悪いのか」
「……急に吐き気がきて、さっきちょっと吐いちゃって、そしたら全然治まらなくて、動けなくて……」
本当は喋るのも気持ち悪いぐらいだけど、何とかタケルさんに伝わるように必死に言葉を振り絞った。
「悪阻だなきっと。他に症状は?」
「腹痛がさっきまでずっと……チクチクっていうかズキズキする感じで……でも今は治まりました」
何だろう、タケルさんが帰ってくるまでは確かに痛かったはずなのに。
タケルさんの顔を見た瞬間、ふっと痛みが解放されたような気がした。
「腹痛か……出血は?」
「ないです……」
まるで医者のように、タケルさんは落ち着く声で次々と私に症状を聞いてきた。
念のためと言って、昨日受診した病院に電話をしてくれた。
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