621人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前の事が心配なのは今に始まった事じゃないからいいんだけど」
タケルさんは、床に座ったままの姿勢で、ソファーで寝たままの私の頭を優しく撫でてくれた。
撫でてくれるその仕草は凄く優しいのに、私を見る目はあのいつもの鋭い視線。
むしろいつもより、迫力がある気がするのは気のせいでしょうか。
「何かあったらすぐ電話しろって言っただろ。何でしなかった?また遠慮でもしたのか」
「ごめんなさい……電話しようと思ったんですけど、スマホがキッチンの方にあって……取りに行けないぐらい具合悪くなっちゃって」
するとタケルさんは小さく息を吐いて。
「……ごめん」
と、何故か私に謝った。
「え、どうしてタケルさんが謝るんですか……」
「責めるような言い方したから」
「……」
いつも余裕な表情で、私の中では誰よりも強くて頼りになるタケルさんが、この瞬間ばかりはまるで怒られた子供のように可愛く見えてしまって。
ぷふっと笑ってしまったら、案の定睨まれてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!