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「……ていうか、久し振りに呼ばれた」
「呼ばれた?」
何の事を言っているのかわからずに聞き返すと、彼女はまだ俺の胸に顔を寄せたまま小声で呟いた。
「名前、久し振りに呼んでくれた」
「……」
『結衣』
その名前を最近口にしていなかったなんて、今彼女に言われるまで全く気付かなかった。
でもそう言われれば確かに、彼女を呼ぶときは『おい』とか『お前』とか。
自然と名前の呼び方から、変わってしまっていたのかもしれない。
「やっぱり、名前で呼ばれる方が、嬉しい」
何なのマジで。
そんな可愛い事言われたら、顔が緩むじゃん。
「……結衣」
俺にとって、特別な名前。
口にすると彼女はゆっくりと顔を俺の胸から離し、恥ずかしそうに見上げた。
「好きだよ」
普段そんな事お互い言わないから、照れくさいといえば照れくさいけど。
もう、そういう照れとかはどうでも良くて。
可愛くて仕方ない、その気持ちをどうにか伝えたくて、彼女の唇にキスをした。
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