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「……ヤバイ。嬉しくて、泣きそう」
なんて言いながら、既に涙が溢れている自分。
そんな情けない俺を、彼女は笑いながら宥めてくれた。
「泣きそうっていうか……もう泣いてるでしょ」
「……性別は?どっち?」
「気が早いよ……時期的にまだまだわからないし。でも、ここにいるのは、確かだよ」
そう嬉しそうに呟いた彼女は、自分のお腹に優しく手を当て撫でた。
……ほんと俺、今まで何やってたんだろう。
今までの俺は、旦那として失格だ。
彼女の体調の異変にも全く気付かず、自分の我が儘ばかり突き通して、毎日のように飲み歩いて。
こんな俺のままで父親になってしまったら、子供が不憫で仕方ない。
「……結衣、俺変わるわ。もう今までのように飲み歩いたり、自分勝手に行動するのやめるよ」
本当は結婚した時点で、変わらなきゃいけない部分だったんだよな。
今更だけど、気付けて良かった。
彼女は俺の真剣な顔をじっと見つめて、溜め息混じりに呟いた。
「……変わるってわざわざ宣言する人って1番信用出来ないんだけど」
「ちょっ……」
「でも信じてあげる。暁斗なら、きっとめちゃくちゃ良いパパになるよ」
久し振りに彼女が見せてくれた、ずっと見たかった満面の笑み。
俺はその笑顔に誓った。
彼女にために。
そして俺達2人の子供のために。
恥じないように生きていく事を。
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