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「何でもないです。説明したら絶対バカにされそうだからやめておきます」
ていうか、既にタケルさん、鼻で笑ってるし。
そのとき寝室の奥の方から、「ママー……」とカケルが私を呼ぶ声が聞こえてきた。
きっとまだ時間が早いから眠れないのかな?
カケルの声で、一気に夢のような甘い空間から現実世界へと引き戻される。
私はカケルがさっきまで読んでいた絵本を手に取り、ソファーから立ち上がった。
「カケル、寝れないみたいなんでちょっと部屋に行ってきますね」
そうタケルさんに言い、寝室へ向かおうとした瞬間。
ソファーに座ったままのタケルさんが、私の腕をギュッと掴んだ。
そして私は、簡単にタケルさんの方へと引き寄せられた。
「タ、タケルさ……」
「たまにはお前の事、独り占めしたいんだけど」
「……っ」
耳元で囁くタケルさんの声で、頭が瞬時にいっぱいになる。
「だから、早く戻って来いよ」
「……はい」
この直後、寝室へ向かった私がカケルに「どうしてママかお赤いの?」と執拗に問い詰められた事は言うまでもない。
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