番外編④precious days

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昔は、他人に甘える行為そのものが苦手だった。 自分でやれる事は、自分でやらなくちゃ。 なるべく他人には迷惑をかけないように。 誰かを頼ってしまったら、もう何も自分で出来なくなるんじゃないか。 そんな風になるのが嫌だった。 でもカケルを産んで、1年くらいが経った頃。 自分で何でも背負い込んでしまっていた私は、早くも子育てに疲れ果ててしまったんだ。 どうしてこんなに泣くのか。 どうして言う事を聞いてくれないのか。 自分の寝る時間を確保出来ない中で、そうやって子供の事を心の中で責めたりもした。 そんなとき、自分で自分を追い込んでいた私を救ってくれたのは、やっぱり他の誰でもない、タケルさんだった。 「お前、本気で子育てナメてんだろ」 と、激しいお怒りから始まり。 「今までみたいに、他人に頼らないでやっていけるほど子育てって簡単なものじゃないんだよ。いい加減気付けバカ」 「……はい」 だけどタケルさんがあのとき私を本気で叱ってくれなかったら、今も私はきっと毎日終わらない疲れを感じながら日々を淡々と過ごしていたのかもしれない。 出産直後のあの頃の事を思うと、今は本当にだいぶ楽になったと思う。 おかげで今は、子育ても仕事も充実していて、毎日が幸せだと日々感じている。
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