半分

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「しんちゃん、ごめん。 私、好きな人が出来た」 しんちゃんの顔が悲しげに歪んでいく。 「最近、杏奈少し変だった。 まさかと思って……杏奈、僕ではダメ? 今更かもしれないけど、杏奈と結婚したい。 杏奈を失いたくない」 しんちゃんが涙をボロボロと流す。 初めてしんちゃんの涙を見た。 罪悪感でいっぱいになっていく。 本当に森之宮さんは私の運命の人なの? しんちゃんと結婚して、暖かい家庭を作る方がいいんじゃないの? 気持ちが揺れ始める。 心の半分のラインを、しんちゃんと森之宮さんが行ったり来たり…… 「しんちゃん。 このまましんちゃんと付き合い続けるなんて出来ないよ。 一度別れて下さい」 私の目にも涙が溜まっていく。 しんちゃんの事をすごく愛してた訳じゃなかった。 しんちゃんは空気のような存在で、いるのが当たり前だった。 しんちゃんを失うと思った瞬間、森之宮さんへの気持ちが恋なのかわからなくなっていく。 二人とも無言のまま、時間だけが流れていった。 ふと時計を見ると、11時。 そろそろ帰らなければ両親が心配する。 「しんちゃん。ごめん」 心が半分に引き裂かれそうな痛みを抱えながら、しんちゃんのマンションのドアに手をかけ、しんちゃんに声をかける。 「杏奈、ずっと待ってる。 もし、いつか僕でいいと思たなら戻ってきて欲しい」 胸がはち切れそうになりながら、頷いて外に出た。
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