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僕と夢を見ませんか?
桜の花びらが舞い散る木の下でその人は佇んでいた。
まるで、そこだけが切り取られた絵のように私の目に飛び込んできた。
一目惚れ。
柔らかな薄い茶色の髪の毛に花びらがひとひら。
触れてみたいと思った。
その日から、私の世界はあの人の物になった。
寝ても覚めても、あの人のことばかりが頭から離れない。
それでも、私には、何もすることが出来ずに、ただひっそりとあの人を見ていることしかできなかった。
それで、満足するはずだったのだ。
ある日、不意にあの人から声をかけられるまでは。
「よく会いますね。えーっと、君は、何年生?」
同学年では無いことは、知っているようだ。
「い、一年生です。」
私は、たぶんこれからずっと、言葉を交わすことは無いであろうと思っていた、その人からの声掛けに舞い上がっていた。
「君の名前は?」
ああ、もう嬉しくて気絶しそうだ。
「斉藤です。」
「下の名前。」
「えっ、あぁっ、弘樹です。」
「ヒロキかぁ。僕は、木下 尚人。」
呼び捨てにされた!今、私の心は、雲の上にある。
木下 尚人、もちろん知っている。好きな人の名前は、すぐに知りたいに決まっている。
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