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一
早く家に帰って涼みたい。そんなことばかりを考えてしまうような暑い夏の日。
視線の先のアスファルトに横たわるカゲロウは余計に僕をいらつかせた。
「沙織、大丈夫か?」
「うーん。何とか。」
「あー。早くエアコンがっつりかけて、アイス食べて-。」
「じゃあ、チョコとバニラのアイスを半分ずつ食べよ♪」
2人とも、少し笑顔になった。
アパートまではあと5分くらい。
人は慣れていく生き物。今この時が幸せなことは間違いない事実なのに、いつの間にか当たり前に感じてしまう。
愚かなのか成長なのか。確かにいちいち感動していたら、生活出来なくなってしまうのかもしれないが、もったいない気持ちはどうしても残る。
アパートが見えてきた。
「やっと着いた。」
ため息のように呟く。
沙織が鍵を取り出す。
柔らかい風が吹く。沙織のセミロングの髪が少し揺れた。
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