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四
「私ね、心が分かっちゃうんだ。」
無言で聞く。
「最初はね、キミのこと、ただかっこいいなーって外見だけで判断してた。」
「うん。」
「だから、趣味が一緒なのも、見たい映画が一緒だったのも、偶然じゃないんだよ。ごめんね。」
「それじゃあ。」
「そう。私が合わせてたの。キミに気に入られるように。でもね……。」
「ん?」
「いつの間にか、好きになってた。いつからなのか分からないけど、キミのこと、好きになってたんだ。」
だからか。意味の分からない微笑みは。僕の気持ちが分かっていたからか。
「でもね、一番のきっかけはたぶんキミだよ。」
テレビの音はもう耳に入らない。
「私が何も意識してないときに、聞こえたんだ。」
「沙織をずっと守りたいって。」
「私、泣きそうになっちゃった。今までそんなこと想ってくれる人、いなかったから。」
沙織の髪を優しく撫でる。僕の肩に体を寄せてくる。
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