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エピローグ
「でもね。不安ばっかりなんだ。」
そのままの姿勢で静かに話す。
「いつか、キミがいなくなっちゃうんじゃないかって。」
それに対する答えなど見つからない。沙織はその不安をかき消すように言葉を続けた。
「だから、いつも半分にこだわってた。そうすれば、いつもキミと私は同じ気持ちになれるんじゃないかって。心が分かっても分からなくても、他の人と同じように過ごせるんじゃないかって。」
いつの間にか沙織は泣きながら笑ってた。綺麗だった。
「俺は……。」
「待って。分かってる。」
言葉を遮られる。
「そう。キミと暮らしてみて分かった。キミとの間にはルールなんていらない。お互い何をしていたって、同じなんだって。」
もたれていた背を起こす。沙織の方を向く。
今度は僕から優しく、優しくキスをした。
静かなときが流れる。
「ありがとう。」
読まれたか。まあいいか。
ありがとうと心の中で返した。
沙織の顔から涙が消え、僕の好きな笑顔に戻っていた。
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