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わたしが、あの子を愛せないわけ
数年前。
わたしは愛する人の子どもを授かった。
一生に一度、この人だけと想う人の子ども。
お腹のなかにいるときは、どれほど愛おしいだろうと期待していた。
これで、あの人は生涯、わたしだけを見てくれるーー
そう思っていた。
生まれたのは、双子の女の子。
まだ赤ん坊なのに、あの人に、そっくりだ。
端麗といっていいほど、美しい。
なのに、なぜだろうか?
わたしは、ちっとも、その子どもを可愛らしいと思えない。
いつも、じっと、わたしの顔を見つめて、子どもらしくないからだろうか?
夜泣きもしない。ぐずりもしない。
健康だし、成長も早くて、とても育てやすい子どもなのに……。
わたしが、アレに気づいたのは、あの子たちが一歳になったばかりのころだ。
夜中になると、くすくすと笑い声。
わたしが起きると、ぴたりとやむ。
うとうとすると、また笑い声……。
(もしかして、この子たちなの?)
そんなバカな。
まだ赤ん坊なのに?
笑い声は、すぐに話し声に変わった。
わたしは、声が聞こえるたびに、とびおきた。
まちがいない。
あの子たちだ。
一歳児が、母親にかくれて、ナイショ話をしているーー
ゾッとした。
わたしに悟られたと感じたのだろう。
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