9人が本棚に入れています
本棚に追加
生きている感覚がない。
そう思い始めたのはいつからだったろう。
一度考え始めたら容易には消え去ってくれないその想いは、やがて。
俺の心を蝕んで、ボロボロにぐちゃぐちゃに、捏ね回してかき乱して。
全てを捨てる覚悟へと変えていった。
人との関わりを絶った俺はきっと、誰よりも記憶に残らず消えていく。
世間で毎日のように報道される『誰か』の死。
その一つに並べ立てられるだけ。
遠い場所で自分の知らない誰かが死んだことを、悼む人なんていやしない。
一週間前に起こった〇〇の被害者、と言われてすぐに名前を出せる人間がこの世界に一体何人いる。
とりわけ酷い事件や、幼い子供に焦点が向けられない限り。人間の都合の良い頭からはいとも簡単に抜けていく。
3日もあれば、忘れられる。
この世界の、ありとあらゆる記憶から。
降り注ぐ星空の下、線路の真ん中に投げ出した身体に虚ろに開いた2つの穴で、ぼんやりと。
俺の存在を抹消せんと迫りくる凶器のカタチを、仰ぎ見た。
こんなものに轢かれたら、本当に、肉片一つ残りやしないだろう。
それを心底嬉しく思って、目を閉じて。
真っ暗な闇の中、訪れる安寧を待ち望む。
直後に感じた衝撃は、思ったより強くて、長くて。
何より、痛かった。
最初のコメントを投稿しよう!