1章 淀んだ心に繋がる手を

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「いっ…てぇ…!!」 身体がバラバラに千切れるような感覚の後、少し遅れて左半身を叩きつけられ擦り切れるような激痛が襲う。 電車に轢かれれば痛みなんか感じないって言ったの誰だよ…! 全身が思いっきり痛くて、沸き上がる理不尽な怒りに憤慨しそうになり、気付く。 「生きてる…?」 しゃべれもするし、かなり痛いが身体も動く。痛みを感じているということは意識も正常。 …何で 頭を過ぎったのは、失敗と不運の二文字。 「なんだよ…っ!」 俺はもう死にたいのに。生きていたくないのに。 不平等を好む神という悪意に満ちた偶像は俺を生かした。 確かに死ぬことができる状況で、無様にも生き残ってしまった。 「お~い、生きてるかい?」 惨めで悔しくて滑稽で、我ながら嘲りの笑みすら漏れ始めた頃。 ふいに頭上から降ってきた間延びした声。 「んだよ…」 「あぁ良かった、生きてて。ごめんね、ちょっとぶつかっちゃって」 ――…は? 「宙に浮いて走る夢の乗り物、ケモミー君のテストしてたんだけど…見ての通り失敗してさ」 声のトーンから察するに恐らく彼女が指し示す先に、見るも無残にひしゃげた何かの残骸が横たわっていた。  
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