1章 淀んだ心に繋がる手を

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こんな笑えない状況ってあるだろうか。 電車に轢かれたと思っていたのは間違いで、俺はただ謎の機械に撥ね飛ばされただけ。 自殺も失敗なら誰にも気付かれず静かに逝こうとした計画も破綻。 「ところで、遮断機も下りた線路の中で突っ立ってたら死んじゃうよ?良かったね、間一髪助かって」 「良かねぇよっ!自殺しようとしてたんだよ俺は!!」 どこに向ければ良いかも分からず持て余し燻っていた怒りが、全部全部彼女に向かう。 所謂命の恩人とも言うべき存在は、俺にとっては悪魔にも等しい憎むべき対象でしかない。 けれど憤激も虚しく、彼女はにゃは、と笑うだけだった。 「随分物騒な話だね」 「凶器乗り回して人を轢いたやつの言葉かよ!つーか公道走っていいのかよソレ」 「うん、最初は私有地走ってたんだけどね」 簡単な話さ、と彼女は困ったように眉根を下げた。 「走らせることに夢中になりすぎて、ブレーキという概念を忘れていたのさ」 にゃははーと再び能天気に笑って見せる彼女とは対蹠的に、俺の心は深く沈み込む。 まさかそんなアホらしい理由で、俺のささやかな願いがぶち壊されるなんて… 全くもって、笑えない。
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