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切れた輪ゴムを見て何かを思いついたらしい彼女は、慌ててそれを回収して走り去っていった。
それが、妙に気になって。
そういえば彼女は家にしかいない。
仕事はどうしているのか。
家事をしないことは最初に出された焼きそばもどきで十二分に分かったけれど。
辛うじてしている掃除と洗濯の時くらいしか、姿を見なかった。
別に見るなと言われている訳じゃないし、家に人を迎えた時点でプライベートを晒したようなもの。
怒られるなんて事態にはならないだろうと思い立ち、そっと彼女の後を追った。
「…何だここ…」
着いた先は地下室。それもやたら長い階段を降りたかなりの地下深く。
「あれ?何だ、付いて来ちゃったのか」
異様な光景の中、皺だらけの白衣がゆらりと蠢く。
「研究室さ。あ、その辺触ってもいいけど指が2、3本無くなっても知らないからね」
部屋を埋め尽くすほど積みに積まれた謎の機械に手を伸ばすと、何やら物騒な言葉が聞こえて慌てて後退る。
「にゃはは、冗談だよ。怯えちゃって案外可愛いとこあるね、少年。ここにあるのは皆イイコ達さ」
剥き出しの金属面。幾多にも伸びるコードの束。動力が抜かれ顔だけがない人形。
それらを見る限り、本当かどうか疑わしい。
彼女の呑気さに渦巻く不安。
頭の中で、不気味に黒い声で、誰かが嗤った気がした。
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