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外は暗闇。閉ざされた窓に映った自分の姿が、ふと目に映る。
黒い痣で覆われた、自分の左半身に目がいく。何かに纏わりつかれたようなその痣に、そっと指を這わす。すると、自分の意思とは無関係に、触れたところがびくりと跳ねた。
「おい! 何だよ!」
「ザザ……うるさい」
「急に触るんじゃねえよ」
「自分の躰に触っただけよ」
「そこはお前だけのものじゃねえだろ」
ザザが私の左半分を使って、精一杯の抗議を申し立てているが、それを無視して、
「入る時に二人って言ってないから、宿主さんが怪しがる」
「知るか、そんなもん」
「私が気にする」
「はっ! そうかよ」
ザザは悪態を吐いて、目玉をぎょろりと外側へ向けた。そのせいで、私の目線は焦点が合っていないように見える。事実、ザザがそっぽを向いたせいで、視界がぐらついて、危うく転びそうになった。
右半分の頬を膨らます私に気づいて、ザザは、
「自分の身を呪うんだな」
と嘲った。
既にあなたに呪われているうえに、どうしてまた、自分から呪われなければならないのか。そんな独り言を飲み込んで、私は用意された湯と手拭いで汚れた躰を洗うことにした。
壁の隙間から吹き込む風が小さく鳴いている。それが私には、寝静まった町の息遣いに聞こえた。私の覚醒に合わせて、ザザも目覚めてしまっただろう。しかし、私の眠れない理由を知っている彼は、この時ばかりは文句を言わない。
数回寝返りを打って、もう一度目を瞑った。
瞼の裏に広がる、どこまでも深い闇。まるで、私の孤独をそのまま映し出したようなその世界に、私は身震いする。
「……眠れないのか」
「うん」
こういう時は黙っていてくれるザザが、珍しく声を掛けてきた。事実なので、私は頷く。
「ごめん」
「気にするな」
そう答えるザザが何を思っているのか、私にはわからない。
「独りぼっちなの、私」
「ああ」
「みんな、私を悪く言うの」
「そうだな。悪い子だからな、お前は」
その一言が、私の胸を引き裂きそうになる。それから、何も言葉が出てこない。隙間風が相変わらずか細く鳴いているけれど、私にはそれが本当に泣いているように聞こえた。
すると、左腕が私の肩を抱いた。
「お前は、世界でたった独りだ。真に孤独なんだ。それが俺を強くして、お前を守るんだ」
「うん」
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