婆伝説 その二

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ギシィットンッ ギシィッ――トンッ ギシィッ――――トンッ 軋む音と、地面に着地する音との間隔が少しずつ大きくなっていく。 その度に、飛び上がり方が高くなっていっている事に気が付くと同時に、こちらに背を向けた人物が、何をしているのか漸く理解出来た。 「ねぇねぇ。ねぇちゃん……あれってさ。ホッピングだよね」 「うちにあるやつと色違いだ……」 生唾をゴクリと呑み込んだ姉が、急に立ち止まった。 「これ以上はヤバイ」 強張った声を出した姉の顔を見ると、その目は大きく見開いていた。 「どうしたの?」 小首を傾げる私を見ることなく、姉は油の切れたロボットのように、ギギギギギッと腕をぎこちなく上げて、真っ直ぐ前方を指差した。 「あ……あれ……」 姉が指しているのは勿論、自分達が興味津々で近付いた人物。 驚いたような顔で見ているのだから、きっと、凄いことが起きているのだろう。 けれど、姉の震えるような声を聞いた途端、自分はそちらに顔を向けることをためらった。 「な、何があるんだよ」 恐る恐る尋ねるが、姉は首を小さく左右に振って、指先を震わすのみ。 勇気を振り絞って、振り返ってみると―――― そこには、ホッピングに乗ってジャンプを繰り返す、丸まった背中が見えた。 「なんだ……普通にホッピングしてるだけ……え? あ……」 ホッとしたのも束の間。 違和感に気が付いたと同時に、姉が震えている意味も理解した。 何故なら。 皺くちゃな婆の顔が、しっかりとこちらを真正面に捉えていたのだから……
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