22人が本棚に入れています
本棚に追加
ギシィットンッ
ギシィッ――トンッ
ギシィッ――――トンッ
軋む音と、地面に着地する音との間隔が少しずつ大きくなっていく。
その度に、飛び上がり方が高くなっていっている事に気が付くと同時に、こちらに背を向けた人物が、何をしているのか漸く理解出来た。
「ねぇねぇ。ねぇちゃん……あれってさ。ホッピングだよね」
「うちにあるやつと色違いだ……」
生唾をゴクリと呑み込んだ姉が、急に立ち止まった。
「これ以上はヤバイ」
強張った声を出した姉の顔を見ると、その目は大きく見開いていた。
「どうしたの?」
小首を傾げる私を見ることなく、姉は油の切れたロボットのように、ギギギギギッと腕をぎこちなく上げて、真っ直ぐ前方を指差した。
「あ……あれ……」
姉が指しているのは勿論、自分達が興味津々で近付いた人物。
驚いたような顔で見ているのだから、きっと、凄いことが起きているのだろう。
けれど、姉の震えるような声を聞いた途端、自分はそちらに顔を向けることをためらった。
「な、何があるんだよ」
恐る恐る尋ねるが、姉は首を小さく左右に振って、指先を震わすのみ。
勇気を振り絞って、振り返ってみると――――
そこには、ホッピングに乗ってジャンプを繰り返す、丸まった背中が見えた。
「なんだ……普通にホッピングしてるだけ……え? あ……」
ホッとしたのも束の間。
違和感に気が付いたと同時に、姉が震えている意味も理解した。
何故なら。
皺くちゃな婆の顔が、しっかりとこちらを真正面に捉えていたのだから……
最初のコメントを投稿しよう!