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「う……うわ……」
ジリジリと後退する二人。
背中を見せているというのに、首を180度回転させて、真っ直ぐ姉と私を両眼で捉える婆。
いくら小学生だからといって、これが「異常」なことぐらいは分かっている。
恐怖と驚きで声が出ず、姉と手を握り合い、ガクガクする膝を叩いて、ゆっくりと後ろへ後ろへと下がり、距離を開く。
何か話しかけてくるわけでも、こちらに向かって来るでもなく、ただ、ジッと私達を見つめてホッピングを繰り返す婆。
ギシィットンッ
ギシィッ――トンッ
ギシィッ――――トンッ
どんどんホッピングは高さを増していく。
ニヤニヤと笑うわけでもなく、真顔で続けるホッピング。
ギシィットンッ
ギシィッ――トンッ
ギシィッ――――トンッ
勢いを増していくホッピングは、いよいよ傍にあるお城を支えている石垣の高さを超えるほどジャンプした時であった。
「えっ?」
急にフッと跡形もなく婆が消え去ったのだ。
「ど、どういうこと?」
どう考えても「人間」ではないモノを目の当りにし、しかも、ソイツに見つめられていた姉と自分は、絶対に何かされると思っていたので、一気に拍子ぬけ。
その場にへたり込むと、いつまで経っても帰ってこない我が子を心配した母親が、公園まで迎えにきたので、今見たことを二人で話した。
元々、寝物語に童話や絵本ではなく、怪談を語るような母親だっただけに、「それはきっとホッピング婆よ」と普通に笑っていたことが一番の衝撃だった。
なんでも、ホッピング婆は、孫とホッピング対決をしている時、運悪く、大きな石の上に着地して転げ落ち、頭を打って亡くなった婆さんの霊らしい。
人は未練を残すと残留思念となってこの世に残るとも言われているけれど……ホッピング対決に負け、更に、命を落とした婆さんは、誰よりも高く飛ぶことを夢見ていたのだろうか?
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