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僕はポプラの木です。
目覚めたらこの草原にいました。
僕のつける花は「勇気」の象徴なんだそうです。
大好きなおばあさんが言っていました。
みんなのお願いを、僕は花が終わると
"ふわふわ"に乗せて一気に飛ばします。
あっ、誰か来ました。
「ポプラさん、ポプラさん。」
かわいらしいお嬢さんがトコトコとやってきました。
「私のお願いを聞いてくれるかしら」
とても真面目なお顔です、心して聞かせてもらいます。
「ママの大切にしていた栞を無くしてしまったの、とても綺麗な押し花の。」
言い終わると、お嬢さんは涙を堪えるようにうつむきます。
仕方ありません、お母さんの悲しむ姿を想像してしまったのでしょう。
だけど大丈夫です、それなら問題はありません。
なぜなら僕は、お嬢さんとお母さん、お二人を笑顔にしてあげられるからです。
僕は木です。
そして花をつけていますから。
体を震わせるイメージでユサユサと
枝を揺らします。
よいしょ、どうかな?
ポトッ。
成功です、少しですが地面に
落ちました。
これで押し花を作ればお母さんも
喜んでくれるに違いありません。
お嬢さんは地面に落ちた花を手に
取ると、困った様子で僕を見上げます。
「ポプラさん。」
なるほど、そうでしたか。
僕はさっきより勢いよく枝を
揺らします。
バサバサ!バサバサ!
ポトッ、ポトッ、ポトッ。
これだけあればどうでしょう。
「違うのポプラさん、聞いて。」
どうしたのでしょうか。
「ママの大切にしていた栞、あれはポプラさんのお花で作ったものではないわ。
あの栞はたったひとつ、だからポプラさんのお花では作れないの。」
僕は枝を垂らし唖然としました。
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