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数ヶ月後。小さな白い部屋に彼女はいた。白いベッドに白い布。高い位置に設けられた小窓には格子がかけられている。
体を起こして暫くぼんやりしていると、ガチャンと大きな音が部屋に響き、白い壁の一部が開いた。白衣を着た大人たちが数人入ってきて、彼女を見てはなにやら話し込んでいる。
じっとそちらを見上げる彼女の目には不安と恐怖が滲んでいた。ぎゅっときつく握った掌に、近づいてきた大人の1人が触れようとした。
「!?」
彼女は思わず後ずさった。
「大丈夫。私たちはあなたを保護したの。貴方はね、少し……特殊な病気かもしれないの。嫌なことは何もしないから、あなたを助けさせて?」
怯えたように涙を溜めた黒い瞳が、目の前で優しく微笑む女性を捉えた。跡がつくほど握りしめていた掌を開いて、ゆっくりと手を伸ばす。差し伸べられたそれに、ゆっくりと重ねた。
「……たす、けてくれる?」
ええ、そう言ってまた微笑んだ。
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