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気がついた時には、あったはずの微笑みは無くなっていた。あの日手を差し伸べてくれた女性だったモノと、その仲間たちだったモノは皆事切れていた。ゴロゴロと転がるソレ等の周りはどろどろと濁った赤い海になっていた。その中で1人佇んでいたのは、小さな少女だけ。 また彼女は失ってしまったのだ。手を差し伸べてくれる暖かな存在を。 「何度も言ったじゃないか。お前のそばに居られるのは私だけなんだって。私が居るんだから、寂しくないだろう?他に誰もいらないんだよ。いい加減、分からないかなぁ」 くつくつと幼女には似つかわしくない笑みが、小さな赤い赤い部屋に木霊した。 ピチャピチャと、濁った赤が跳ねるのを嬉々として歩いてゆき、扉に手をかけた。 「?……ああ、これじゃあ目立っちゃうね」 自分の手と服を染める滑った赤を見て、至極真面目な顔でひとりごちた。 彼女の部屋からベッドにあった白い布を簡単に体に巻きつけて、その施設の外に出た。見上げた曇天からはしとしと雨粒が落ちてきていた。それを全身で浴びるように両手を広げ、彼女は天を仰いだ。
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