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「さあ、また2人きりになれた!今度はどこへ行ってなにをしようか?アナト、お前が行きたいところならどこでもいいよ!……ただし、お前と私、2人だけでね?私とお前は半分ずつなんだ。一生離れることはない。もしもまたお前が約束を破ったら、お前を守るためにどんなことだってしちゃうからね?」 途端に雨脚が強くなった。髪はしっとり濡れ、白い布も雨を吸い取って色を変えた。赤がこびり付いていた腕も、雨が綺麗に洗い流して透き通る白に戻った。 「……ここは、どこ?」 彼女の黒い瞳が空を映す。 そこからやがてゆっくりと視線を下ろす。 彼女の記憶にある衣装とは異なり、今はただ白い布がまかれているだけ。思考を巡らすが、脳は何も記憶を辿ることをしない。唯一記憶にあるのはあの優しい女性の微笑み。それを最後に、記憶を司る機能は活動を止めてしまったようだ。 仕方なく辺りを見回す。朧げな女性の微笑みを、声を思い浮かべながら、彼女はまた「優しさ」を求めて、ぼんやりと歩みを進めた。 歩いて歩いて、行き着いた先は森の中に佇む、辺りに何もないただ一件だけの小屋だった。 明かりが煌々窓から漏れている。雨が酷くなり、風もごうごうと吹きつけている。その光だけが自分を救ってくれるような気がした。 何から救われたいのか、何から逃げているのか、ふと彼女は疑問に思った。 その時少しだけ胸のずっと奥がざわついた気がした。それでも、足は、手は、本能は、引き寄せられるかのように光の漏れるその場所に向かっていた。 そして彼女はその小屋の扉をノックした。 救済と破壊の無限ループは今もどこかで回っている。 fin
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