第3章 芽生えの国の王太子 2

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ロストークの王宮の一角。 宮殿の奥の間に先王の后、レイムが住んでいた。 つまりセレとヤールの母親である。 先王が在位の時には中央の高い塔にいた。上から二番目の階を全て使っていた。 最上階は国王の部屋だ。今はヤールの物となっている。 夫である先王は心臓が弱り、退位してからは別邸で療養している。 レイムも一緒に行こうとも思ったが、即位したばかりのヤールを少しの間、見守る事にした。 実のところは、もう少しヤールと話しがしたいだけだ。 ヤールの国務の僅かな隙を、目ざとく見つけては話しに来る。 今日は、部族の代表を集めての話し合いが王宮の会議室で行われていたが30分前には終わっている。 もう部屋に戻っているだろうが、戻りたてでは流石(さすが)にヤールの機嫌を損ねる。 「…そろそろね…」 頃合いを見計らってレイムは塔の階段を上った。 王の部屋の前に立つとヤールの方から声がかかった。 「母上ですね。お入り下さい。」 「お疲れ様ね、ヤール。」 レイムは部屋に入った。 「今の所は部族間の揉め事は無いので、それ程でもありません。治水の件は多少面倒ではありますが、何とかします。…で?」
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