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持ち主に返せないまま、ぬいぐるみは姫の元に遺ってしまった。
「出発する2日前に会ったのです。あの時に返せば良かった…。」
姫の瞳が潤んだ。
「…そのぬいぐるみを返す為に時を遡りたいと?」
「はい。そうです。」
女性というのは何処かに純真な部分を持っているものなのだな、とセレは思った。
「姫もやはり女性だ。可愛い所がお有りだ。」
「……」
セレに『可愛い』と言われて、リズ姫はぽっ、と赤くなった。
その瞬間、セレは背中に熱と痛みを感じた。
ホージュが魔法でセレの服に火を着けたのだ。
…油断した…
すぐに『真空』で消そうとしたのだが…
「!?」
セレの服が半分ほど消えてしまった。
熱を感じた辺り…背中のやや左寄り、心臓の後ろ…を中心に、何かで切り取った様に布地が無くなっていた。
左の袖がスルリと落ちた。
「……」
みんなが唖然とした。
いつもピンポイントで確実に消火できたのに、どうした事だろう?
「ホージュ、謝りなさい!…すみません、私も水の魔法で火を消そうとしたので、セレ様の魔法と重なってしまったのだと思います…」
リズ姫が申し訳無さそうに言った。
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