第4章 8080日

37/38
178人が本棚に入れています
本棚に追加
/258ページ
持ち主に返せないまま、ぬいぐるみは姫の元に遺ってしまった。 「出発する2日前に会ったのです。あの時に返せば良かった…。」 姫の瞳が潤んだ。 「…そのぬいぐるみを返す為に時を遡りたいと?」 「はい。そうです。」 女性というのは何処かに純真な部分を持っているものなのだな、とセレは思った。 「姫もやはり女性だ。可愛い所がお有りだ。」 「……」 セレに『可愛い』と言われて、リズ姫はぽっ、と赤くなった。 その瞬間、セレは背中に熱と痛みを感じた。 ホージュが魔法でセレの服に火を着けたのだ。 …油断した… すぐに『真空』で消そうとしたのだが… 「!?」 セレの服が半分ほど消えてしまった。 熱を感じた辺り…背中のやや左寄り、心臓の後ろ…を中心に、何かで切り取った様に布地が無くなっていた。 左の袖がスルリと落ちた。 「……」 みんなが唖然とした。 いつもピンポイントで確実に消火できたのに、どうした事だろう? 「ホージュ、謝りなさい!…すみません、私も水の魔法で火を消そうとしたので、セレ様の魔法と重なってしまったのだと思います…」 リズ姫が申し訳無さそうに言った。
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!