第5章 芽生えの国の王太子 3

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当然だ。生後の数週間を一緒に過ごしただけなのだから。 そんな事もあろうかと、オーリはプレゼントを用意していた。 ゼンマイ仕掛けで動く馬のおもちゃだ。セレは動く物が好きだとヴァシュロークから聞いていた。 ゼンマイを巻いて床に置くと、リズミカルに馬の脚が動いてカタカタと歩いた。 「どうだ?セレ、面白いだろう?」 セレは興味津々で近づいて来た。 「お前もやってごらん。」 セレの小さな手を取り、一緒にゼンマイを巻いた。 また動き出したおもちゃを見た時、やっとセレが笑顔になった。 …可愛かった… 自分の子供とはこんなに愛おしく感じるものか… 初めて抱き上げた時の幸福感は今でも忘れられない。 この子の一生はおそらく人よりも短い。そしてかなり制約を受ける。その中で、少しでも多くの楽しみ、喜びを感じさせてやりたい。 オーリはそう思った。 だが、その頃は国内に不穏な動きがあり、自然災害も頻発した為、なかなか身体が空かなかった。 セレの誕生日にすら顔を出せない事もあった。 父と子の会話などほとんど出来ない内に、セレは命を終えてしまった。 オーリがセレの笑顔を最後に見たのは成人の儀の時だ。
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