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米津は困り眉を作って同調した。
「ま。そう思っちゃうよなぁ…」
言えるわけがない。最初に火災現場に突入した消防隊員を連れて来い。そいつが死体の第一発見者なんだから。そんな高飛車な要請が、警察からあったなんて。
「師匠のこと覚えてるよな?」
「秩父師匠?」
「そう、秩父師匠」
時代錯誤な呼称だが、指しているのは芦谷よりもさらに年下の男だ。三人が一時期はまっていたオンラインゲームのパーティメイトで、その超越したゲーム技術から「師匠」と慕われている。
その正体は、これから上亮たち会う夕暮警察署の若手刑事だった。
「さっきも連絡くれたんだけど、先倒しですごい謝られたんだ」
米津は鼻の頭を少し掻く。本気で困った時にする仕草だった。
五時のチャイムが流れだす。車庫の外の空は相変わらず暗い。米津は朗らかさを務めて白状した。
「今年から、師匠のところに〝やばい人〟が来ちゃったんだって」
滅多に人の悪口を言わない先輩のきわどい表現に、上亮と芦谷は豆鉄砲でも撃たれたような顔をする。
「やばい人?」
「なんスかそれ?」
よくわかんないんだけど、と前置きながら米津は自身の携帯を覗いた。タイムラインには、土下座する猫の画像がずらずら並んでいる。
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