ROOM.1 ジャワ・ハイツ203号室(5)

3/4
222人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
 米津は困り眉を作って同調した。 「ま。そう思っちゃうよなぁ…」  言えるわけがない。最初に火災現場に突入した消防隊員を連れて来い。そいつが死体の第一発見者なんだから。そんな高飛車な要請が、警察からあったなんて。   「師匠のこと覚えてるよな?」 「秩父師匠?」 「そう、秩父師匠」  時代錯誤な呼称だが、指しているのは芦谷よりもさらに年下の男だ。三人が一時期はまっていたオンラインゲームのパーティメイトで、その超越したゲーム技術から「師匠」と慕われている。  その正体は、これから上亮たち会う夕暮警察署の若手刑事だった。 「さっきも連絡くれたんだけど、先倒しですごい謝られたんだ」  米津は鼻の頭を少し掻く。本気で困った時にする仕草だった。  五時のチャイムが流れだす。車庫の外の空は相変わらず暗い。米津は朗らかさを務めて白状した。 「今年から、師匠のところに〝やばい人〟が来ちゃったんだって」  滅多に人の悪口を言わない先輩のきわどい表現に、上亮と芦谷は豆鉄砲でも撃たれたような顔をする。 「やばい人?」 「なんスかそれ?」  よくわかんないんだけど、と前置きながら米津は自身の携帯を覗いた。タイムラインには、土下座する猫の画像がずらずら並んでいる。     
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!