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上亮は帽子のつばをひょいと上げて秩父に応えた。
「で、後ろのが…?」
「どうも~。夕暮警察署捜査一課の松山です~」
ヨレヨレになったスーツの上からちょっとシミのついたトレンチコート。見た目はサスペンスドラマから飛び出してきたすっとぼけている刑事そのものだ。
もう直しようがないといった感じの猫背が特徴的だ。「秩父が師匠なら僕は大師匠ですな~。ははは」と笑うと、不思議と片頬だけが上がる。
「紹介します。周防と糸魚川。二人ともうちのチームの主力なんですわ」
そう、松山は秩父と同じジャケットを纏った男女を指した。
年は米津や上亮くらいか。二人とも挨拶こそくれるが、目つきが尋常じゃない。堅気のそれではないと言っていい。
特に唯一の女性メンバーである糸魚川の薄い二重の目は「すでに二、三人殺ってます」と語っているようだ。
ネット対戦中、秩父が「皆さん、うちの先輩たちと比べると殺意が足りないんですよ」と言うのを、何かの冗談としてとらえていた消防士たちは違いの顔を見合った。
「これで全員なんですか?」
「あ~…」
松山は髪をかきあげる。長らく切っていないんだろう、ガサガサという音が聞こえてくる。
「今年から来たうちのトップエースが…いるんですけどね」
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