ROOM.1 ジャワ・ハイツ203号室(2)

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 人目を憚らず爆笑するリーダー格の男は、棚木という。見ているのはよりにもよってアダルトサイトだ。体育座りでうまく隠しているつもりだろうが、弘からはバッチリ見えている。いよいよ動画は佳境らしく、不良たちの目はスマートフォンに釘付けになっていた。 「棚木くん、もうちょっと静かにさ…」 「はあ?担任もいねぇのに何ビビってんだよ?」 「いや、だから。羽賀山先生よりもまずいのが…」  肩を小突かれ、警告される。  弘は顔を手で覆った。  正直、担任の羽賀山がタバコを吸いに消えず、棚木たちと一悶着起こしてくれた方がどれだけよかったか。 (ああ、どうして棚木くん達は気づかないんだ…こっちは背中が冷えっぱなしなのに)  突き刺さる強い視線から逃れることが出来るなら。弘はなんだってするつもりだった。  殺される。そんな錯覚さえ抱いてしまう。  相手は命を救う側の職業についている男だというのに、だ。 「…。…」  とにかく目が印象的な男だった。大きく、鋭い。ぎろりという音が似合いそうな色をしている。形は綺麗な半月で、上に乗る眉は濃く男らしい。平生の顔での癖だろう、眉間の皺は深く刻まれている。  犬の毛を思わせるパサパサとした短髪。上には、これも制服の一部なのだろう、紺のアポロキャップが載っている。つばの部分には金の色でオリーブの葉が刺繍してあり、額には、「 YUGURE FIRE DP.」というロゴが刻まれていた。     
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